長月の 軒先借りて 店開き

久しぶりに訪れる昔の職場。
お邪魔します、と共に、持ってきた箱を掲げる。
夜遅くまで会議したテーブルで、
ひとつひとつ選んだケーキを広げる。

ここにはどのくらい勤めただろう。
楽しい思い出ばかりが浮かぶのは、
今が楽しいから。
最後にもらったピンクの花束。

「私これ」
「えー、それほしかったのに」

お皿が空になるころには、
日々の全てを口に上らせてた。
皆、幸せそうね、とか、
いいなぁ、とかいって、
話を聞きながら、
それぞれの生活を省りみたりするのかな。

ほんの少しの間だけど、
楽しかった。
だけど、それがほんの少しの間だった分、
ここが日常じゃないんだなと、
余計につよく思った。