恋は遠いものだと思っている。
なぜなら私は心を動かさない。
感激したフリ、嬉しいフリ、機嫌のいいフリなどは得意だけれど、
表面の半分も気持ちが伴っていないと、
一人くらいは気付いたりしてくれているのだろうか。
恋は遠いものだともう知っている。
独りでいるうちに自分に合わせることに慣れすぎた。
夕食のメニュー、テレビのチャンネル、機嫌の悪い顔などは全部そう。
他人といれば、度合いはともかく、多少は気遣いをする。
それが実は負担になってると、
たくさん騒いだ後に独りの部屋に帰ると気付く。
それは要するに、心を動かしたくないことと同じ。
心を動かせば、気力と体力を使う。
そんなのは疲れると避けていたら、
どうすればいいのか忘れてしまった。
だから、私は恋なんてしなくてもいいと思っている。
けれども、気付けば世の中は恋に愛に溢れている。
映画を見ても、小説を読んでも、テレビを見ても、
人は、意外に思えるほど、 頻繁に恋してる。
それを見る度、つくづく自分は恋の出来ないオンナだと思う。
恋ができるかできないか。
それは要するに心を動かせる能力があるかないかだろうと思う。
独りで寝るようになってしばらく経って、
自分に欠けているものが何かに気付いた。
私が恋をしないのは、それが理由なのだ。
あなたをまだ気にしているなんて、
そんなことは認めない。