秋風の 離れ行くほど 濃くなりて

すでに終わったことのほうが、
よく見えることがある。
高校時代が煌めいてよみがえるように、
すでにさよならしたあなたとの、
初めて声を交わした瞬間や、
手をからめたときを、
昨日の上司の言葉よりずっと、
鮮明に思い出せる。

波の打つ海の縁に立って、
水平線を眺める。
太陽の位置によって、
空気の流れの違いによって、
遠くへ行けば行くほど、
色の深みが増していく。

海の向こうとあなたと、
どちらが近いだろうか。

これから時が経って、
私が儚くなるまで、
あなたのことを思い出し続けたら、
まつ毛の影が見えるほど、
つぶさに記憶がよみがえるだろうか。

それならば、長く生きていよう。
最後はあなたとあるために。