おしどりの 薄らむ空に 旅立てり

冬の空って、青いのに、
どこかむなしいと思いませんか。
息をのむほどきれいだけれど、
心が痛むほど遠い。

あんまり空が青いので、近くの公園でお散歩していたら、
その人を見ました。
いくつくらいなんだろう。
腰も曲がって、杖をついていました。

ずっと空を見てるんです。
何だろう、と思って私も空を見てみましたが、
この目に映るのはただの青。
なぁんだ、ともう一度その人を見たら、唇が動いたんです。

声は聞こえない距離にいたので、
それが何だったのか、本当のところは分からない。
でもきっと、呟いたのは名前。
そんな気がして仕方ありません。

遠いなぁ、といったのかしら。
それとも、この空の下でならその人に会えると思ったのかしら。
ながく一緒にいたのの続きで、いつものように話をしにきたのかしら。

私にはまだ分からない。
だって、冬の空はこんなに青くて、きれいで、遠いから。