文豪の 残り香薫る 小春かな

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時代は移りかわるものだなと、
そう実感することは多いけれど、
ここもその一つ。
畳も、格子のついた障子窓も押入れも座卓も、
今もありそうで、けれどもないものばかり。

時は留まらないものだなと、
それはいつ、どの瞬間も思う。
どれほど幸せな瞬間もどこか虚しいのは、
必ず終わるとわかっているからかもしれない。

誰もが、時が終わるのを知っている。
今、この瞬間が、実際に瞬間でしかなくて、
終わってしまえば、過去になることを。
特に幸せな時ほど、それを強く感じる。

あの人は幸せだっただろうか。
この部屋の、この机の前に座っていた時。
私は時が過ぎ去るのを惜しむだろうか。
この部屋を出る時。