願いさえ 南風の赴く そのままに

なんて明るいんだろう。
一目見た時、そう思った。
光に溢れる日曜日の午後。
そこには全ての憂いを忘れ、
明日への不安を消し、
今、その瞬間を生きる人がいる。

なんて明るいんだろう。
何度見ても、そう思った。
そして羨ましかった。
ここに描かれている人たちも、
描いたルノアールも、
この絵に関わっている間、
きっと暖かい光に包まれていただろう。

違う、それだけじゃない。
彼らの明るさは心からの歓びなのだろうと、
私は羨ましがっている。
100年以上前の名作に。
その笑顔を残した人たちに。

ゆっくり歩いて展示室を出て、深い息をついてから考えた。
……私、自分が幸せに生きることを求めてみようか。
今まで決して後ろ向きだったわけではないけれど、
それでも笑顔と悲しさの真ん中にある静かな安全圏にいた。
だけど、私も、この人たちと同じように笑ってみたい。
その瞬間を生きてみたい。
どの瞬間も人生なのだから。

そして、そのことが日々を明るく照らすのであれば、
私は多分、もう少し長く生きたいと、きっと願うだろう。

優しい気持ちになる絵をこの世に届けてくれた大家の志と、
そして100年以上経っても明るいこの人たちは、
私の命を超えて長く生きる。
そして何万人、何億人の人に、
それぞれ違う感想を与えつつ、
けれども皆、結局暖かく生きたいと思うだろう。