限りのある命だ。
あれだけ冬を耐えたのに、
あれだけ愛でられていたのに、
両手で日を数える間に、
さよならと命を終える。
でもさ、桜の花からしたら、
充分に生ききったかもしれないよ。
訪れた人全てに息をつかせて、
つかのま妖艶で幽玄な世界を味わってもらった。
それって、この世に生をうけたものとして、
幸せなことだと思わない?
そうかもしれないが……、
聞いていた私は、
けれども完全に首を縦には振れない。
命の終わりなどまだ知らぬことだ。
あなたを愛しきってもいない。
それは、生ききっていないことと同じだ。
命は限りがある、ね。
そういって私は、
掌で空を舞う花びらを掴んだ。