河越しの 後ろ姿や 若葵

どこか遠くに立つ、霞越しのその姿に、
いつもこがれていた。
仔細に心に描いていた。

やっと手に入れたと涙したのは数日前。
だけど、最初から知っている。
帰りの切符は鞄のなか。
あなたとの逢瀬は、
最初から別れを意識している。

そうだとしても、会いに来た。
そして、河越しのその姿を飽かず眺めながら、
瞼の裏に焼き付けても焼きつけても、
足りないと分かっていながら、
私はあなたを見つめ続ける。