思い出は 曇りの空と 薄桜

真っ青な空の下の桜より、
薄曇りの空の下の桜のほうが目に沁みる。
美しい春の訪れ、ではなく、
何か過去を思い起こさせる、
美しいけれども、哀しいもの。

そう言われればだれだって気付く。
ふとした瞬間に思い起こす過去は大抵、
美しいけれども、哀しいもの。
目の端から細い筋になって落ちる、
涙を伴うもの。

それなら、どうして桜もそうなのだろう。
誰かの過去を、埋めているからだろうか。
それともそれは、
私が過去を埋めたままにしているからだろうか。