残る虫 うれし涙も 薄曇り

あなたが別れ際につぶやいたお礼の言葉、
うれしくて涙が出た。
君がいなければ今の自分はない、なんて、
結構な殺し文句。

誰かのこの瞬間にプラスになれたなんて、
それは確かに名誉なこと。
それがこれから世界に羽ばたこうという人なら、
なおさらその思いが増していく。

さようなら。
あなたはそういって、
空港の、明日に旅立つ人だけがくぐれるゲートへと向かう。
私は涙なんて出てないふりをしながら、
頑張ってと大きく手を振る。

二人で、いろいろあったよね。
あなたは、それをちゃんと身に付けたんだね。

ゲートにその姿が吸い込まれて、
ひとり残されて、
ただ去るのもなんだかさびしくて、
旅立つ幾多もの飛行機が見える場所へ行った。

空は曇り。
精一杯の応援のメッセージは、
あの雲を突き抜けていけるのか、心配になる。