寒明や 薄く香りの 立ちのぼる

寒い夜にひとつ明りをつけて、
あなたのことを思い出す。
あの夏の日に訪れた異国や、
あの秋の日に交わした会話を。

寒い夜に毛布を体に巻き付けて、
あなたのことを思い出す。
あの春の日にであったことや、
あの冬の日に抱きしめてくれたこと。

どうしてだろう。
こうして過去と向き合うのは、
いつも寒い夜ばかり。
他のときだって、
ふとした瞬間に蘇ることはあるけれど、
じっくりと思い返すのは、
いつだって、ひとり、
寒い夜。