いつぞやは 冬枯れの下 育ちけり

あのとき、好きになった。
図書館の窓から覗いた道端で、
あなたが私に気付いて頭を下げたとき。
あんなに遠かったのに、
太陽が雲から差し込むような、
大海原でついに陸地を見つけたような
ううん、どんな表現も足りないあの瞬間、
私はあなたを好きになった。

人生はありきたりの連続で、
だから、見通しがきくものだと
惰性みたいにして日々を過ごしていたけれど、
何気なく曲がった角の先に、
空気の香りすら違ってしまうものが待ち受けていると、
あのとき、知った。