一番美しいときを待っていた。
全てが赤く染まって、
目が離せなくなるこのときを。
どうしても惹かれてしまう。
視線を向けずにはいられない。
まるで媚薬のように魅了する。
だけどそれは、
たった2週間かそこらのこと。
その後はただ、茶色の枝だけが残って、
まるでそこらの石ころのように、
目を留めもしなくなる。
人は紅葉とは違うから、
美しさだけではかられるわけではないけど、
じゃあ、何が自分を留めておけるのか。
一枚、また一枚と落ちる紅葉を前に、
ゆっくり、そういうことを考える歳になった。