その色の 数を数えて 蝉時雨

その画家は理想を求めた。
この世界に比べたら、
小指の先ほどでもないキャンバスの上に、
この世界よりも大きなものを込めた。

命を賭したものの行先を、
彼は今、どこからか見ているだろうか。
いずれの絵にも、
その時の彼の世界の全てを描きこんだ。

命は、つまり世界と同じなのだと、
意識してなのか、
無意識のうちなのか、
真実を、違う形で、いくつもいくつも。

彼の世界は、彼の命は激しかった。
そのまま伝説になって、
この世界よりも大きなものが、
キャンバス一枚に描かれている。