朝来れば 霞むや尾根も まぼろしも

ひと晩、そばにいた。
ぴったりと、いくつかの声をたてて。
あなたとは、なんて空の高みまで昇れるのだろう。
その背中に指を這わせ、唇を合わせたまま、
夢の中まで触れあった。

夜の終わりはすぐに来る。
ほんの一瞬、ふとした間があいた後、
空が白み、山肌から同じ色の霞が沸いてきた。
霞はこの世のものならず。
私は、必死で手を振って、
いらないと幾度もいったのに、
心の内側を震わせていたものも、
全て包んで奪い去る。

あとに漂う残り香は、
空しさと同じくらい掴むことができない。