物思ひ 日暮れ来たるや 初蛍

初めて恋をしたとき、
心臓のあたりをくすぐるような感覚や、
思わず長い息をついてしまうしめつけや、
その人の影すらも追ってしまう熱に、
ふと省みては驚いていたのを覚えている。

詩や歌や物語りに描かれている恋というのは、
こういうものなのだ、なんて、
そこまで客観的になるほどの余裕はなかったけれど。

それにしても、恋は初めてじゃなくなっても、
どうしていつまでも慣れないのかしら。
あなたを想って暮れていく一日に、
蛍がまた光を灯している。