瞼裏 雨靄煙る 湖岸かな

ロマンティックな風景というのはある。
その場に立ったら、思わず涙してしまうような風景だ。
それはたいてい秘密の場所で、
そういうところを誰もが持っている。

私の場合は、湖とも海ともしれない広い水辺の、
あの木の隣に立った時に見える風景。
朝と夜、夏と冬、
今日と明日ですら、何かの違う場所。

あそこには、景色を愛でに行くのでなくて、
もしかしたら、泣きに行くのかもしれない。
今ふとそう思った。