遠花火 つもりになるや ひとり膳

今日は花火。
藤の模様の浴衣を着て、
紫の帯を巻いて、
うなじに一筋、髪を垂らして、
あなたと会う、はずだった。

すれ違いは、なぜ起きたのかしら。
電話がつながらなかったせい?
待ち合わせの場所を間違えたせい?
それともずっと前の、
あの言い争いのせい?

あなたといたふり、
楽しかったふり。
そうやって、記憶を塗り替えておく。

予約をしておいた、遠景に花火の見える和食屋さんは、
ずっと前から予約していた有名店。
ひとりできてしまったけれど、
二人分、頼むわけにいかないよね。
涙でぼやければ、
自分の影が二つに見えるけど。