夏の夜 取り出したる 世迷言

ウィーンのそこは、
ずいぶん音の響くカフェだった。
きっと昔の人がたてたひそひそ声も、
館内のたくさんの人が聞けただろうと思うほど。
天上の丸穴を抜けて、
どんな会話が飛び散っていったかしら。
私たちの、あのときも、
100年以上前の姫君の秘めごとと同じ。
歴史に混ざって、夏と溶け合う。