秋風や ひと目がために 千里行く

ヴァネッサ・カールトンという女性歌手の歌で、
「サウザンド・マイルズ」というのがあります。
ただあなたに会うために、私は千マイルだって歩く。
そういう歌です。

ピアノの前奏から始まるんですが、
それが、空気みたいな、空みたいな、
とても透明なメロディなんです。
深い想いを歌っているのに、
重しのない薄い青の水みたいに、
誰の心にも染み入るような歌。

私、恋は、嬉しさを知るものじゃないと思う。
いや、嬉しさも、それも最上の嬉しさを感じるのですけれど、
それよりもなによりも、しんしんとした哀しさを思い知らされる。
想っても伝えきれないし、
芯のところでつながるのは一瞬だけ。
それでも、どうしようもなく想ってしまう。

機会があったら「サウザンド・マイルズ」、
是非探してみてください。
哀しみを含んだその声に、感じない人はいないと思う。
恋をしたことがあるのなら。