砂利敷きに 誰を探さん 秋の風

あれから100年も経っていないのに、
今はもう住む人もなく、
誰かの生活を作りだすこともない、
歴史的建造物。

2階から下る艶のある手すり、
食堂に設えられたキャビネット、
誰かに言われたからだけじゃなくて、
気付いてほしくて磨いたシャンデリア。

車寄せに近づく車輪の音に、
耳を澄ませた人が何人いただろうか。
そこかしこにささやき声のようにのこる、
甘い心のうずき。

誰と誰がどんな風に心を交わしたのか。
その形は、今の私たちとは違うのだろうけれど、
きっとそこにあったであろう
視線の絡み方や、声のかけ方。
そんなものを思い描きながら、
砂利の音を聞く。