百年は 毛皮纏いて 通り過ぐ

その昔、数多の男を手玉に取って、
その名をとどろかせた女性がいた。
細身の体に流し目の似合う顔、
貴族も金持ちも異国の王も、
写真を買っただけの人にも愛された、
かの国の伝説の人。

今も残る写真は、
毛皮を巻いて、宝石を付けて、
その全てに勝る微笑みを浮かべているものばかり。
いくつになっても色あせなかったという美貌は、
その時代から続くカフェやレストランのよう。
ル・トラン・ブルーのこの雰囲気を纏っていたなら、
確かにたくさんの人を魅了しただろうと、
天井を見上げながら考えた。