知らないと 背を向ける君 夕立前

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嘘をつきたくはなかった。

嘘には二種類あって、
自分を守るためのものと、
相手を傷つけないためのものがあるけど、
そのどちらにしても、
嘘をつくつもりなどなかった。

だけど、人というのは弱いもので、
その場になったら守りたくなる。
即座に計算してしまう。
このひと言が、どれほどの作用を及ぼすか。

嘘をつかれたくはなかった。

大抵の場合、
特に付き合いの長い人ならば、
嘘をついた瞬間というのは分かる。
だけど、分からないのは、その理由。
何のために、その言葉を発したのか。
それを思って、不安になる。

嘘をつくということは、
不安を与えるということだ。
たとえ安心させるためといっても、
最も大事な人は、
嘘をついたことに気付いているもの。
それだけあなたのことを常日頃から観察しているから。

それならやはり、嘘はいけないものなのか。
あるいは、真実だけが正しいものなのか。

少なくとも、心だけは正しくあろうと思う。
正しいことを知っていようと思う。
嘘と真実の間に、正しいことはないように感じるから。