移り気の 出されたままに 葡萄喰う

嫌いなものはないんです。
そういって受け取った、専門店のお弁当。
席に座って、ぱかりと蓋をあけて、
うわぁ、おいしそう。
周りを気遣って、一応そういっておく。
それから、
どれにしようかな。
いけないと分かっていつつも、
ぐるぐるぐるぐる迷い箸。

ほんとうはそういうとき、
目移り、っていうより、
心から欲しいものがないんだよね。
それとも、心から欲しいものが何なのか、
自分自身も知らないのかも。
どっちにしても、息をついちゃう。
口に入れればおいしいって、
わかってるんだけど。