佇むや ヒマラヤ桜の 花影に

冬のはじめに咲く桜があるという。
襟巻に頬を埋めて、
寒さに肩を縮ませながら、
あなたと二人、見に行った。

山間の、車通りから少し歩いたところに、
濃いピンクの塊があった。
背は意外なほどに高い。
てっぺんは見上げるほど空の側にある。

あなたはカメラを握って、
あちらからこちらから、
まるで刹那を掴もうかというように、
何度もシャッターを押している。
私は木の下に立って、
ヒマラヤ桜の空気を吸い込む。

そうしながらずっと、
あなたを見つめている。
空と桜とあなたと、私。
ただ在るということを噛みしめる。