客引きの 手首や細し 冬の暮れ

あの角で、あなたを見かけた。
後ろ向きで、いつものコートを着ていた。
笑ったのが、背中が揺れたので分かった。

誰といるの? 
何を話してるの?

走っていって、あなたの腕に手を絡ませて、
そしていおう。
あなたの恋人です。

ほほ笑んで。
でも刃を含んだ目で。
できれば余裕の表情で。

それなのに。
ちらりと見えたその人、
知らない顔だった。
真っ黒な目に濡れてるみたいな唇。

そうしたら、足が止まった。
あなたがどんな顔してるのか、分からないままだったのに。
側に行けなくなった。
その人のあなたへの視線、何だかわかったから。