万人の 思い過ぎ行く 秋の峰

切り立った崖が海に落ちる、
そんな場所に建てられた犬吠崎の灯台は、
明治7年にできたそう。
その近くに、高浜虚子の碑が立っていて、
彼が1939年に吟行で訪れた際に残した句がある。

「犬吠の 今宵の朧 待つとせん」

きっと昼下がり、
荷物を背負って歩いてきて、
やっと宿をとる寸前の虚子。
道々ずっと何が心にあったのか。
朧に何を浮かべようとしていたのか。

人の建てたもの。
人の残した思い。
恋なんかしちゃったからね。
そんなことを思いながら、
碑の向こう、
灯台の向うに目を馳せた。